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海上自衛隊が引き継ぐ海軍の良き伝統、教え

海自幹部候補生学校

 

◆五省について◆

五省

艦隊



【五省】
1、 至誠に悖(もと)る勿(な)かりしか
1、 言行に恥ずる勿かりしか
1、 気力に欠くる勿かりしか
1、 努力に憾(うら)み勿かりしか
1、 不精に亘(わた)る勿かりしか

 

【五省の始まり】
冒頭の写真の広島県江田島市にある海上自衛隊幹部候補生学校においては海軍兵学校からの伝統の五省を現在でも行っている。
五省は昭和7年、第34代海軍兵学校長 松下元(はじめ)少将の発案により生徒各自の1日を反省させ明日の更なる修養に備えさせるため、5カ条の反省事項を考え生徒に実践させたものです。

【五省の実践】
海軍兵学校では、夜の自習時間の終了5分前に「自習止め5分前」のラッパが鳴ると、生徒は自習を直ちに止め、使用していた書物を素早く机の中に収めて、姿勢を正します。そして当日の当番生徒が五省の5項目の各項目を順番に問いかけ、その他の生徒は瞑目し、心の中でその問いに答えながら1日の自分の行為、姿勢を自省自戒していました。
海上自衛隊幹部候補生学校においては、この五省を現在でも引き継ぎ、夜の自習時間の終了5分前に海軍兵学校と同じ要領で行っています。
要領は、当直学生が五省の各項目を読み上げ、教室の全員が瞑目し1項目づつ1日の反省、自戒を行います。
当直学生の読み上げ要領は、「ひとつ、至誠に悖るなかりしか。・・・ひとつ、言行に恥ずるなかりしか。・・・ひとつ、・・・・」です。

【五省の意味】

「1 至誠(しせい)に悖(もと)るなかりしか」
日本国の海軍士官になるために高い志を持ってここ海軍兵学校に入校してきた。
今日一日、誠意を尽くして生活できたか?客観的に自分を振り返り不誠実と思われる振る舞いはなかったか。真心に反することはなかったか?

「1 言行に恥ずるなかりしか」
厳正な規律とチームワークが必須のまさに運命共同体の軍艦を基本とする海軍士官にとって嘘やごまかし、言い訳は最も恥ずべきこととして叱責されました。
多くの部下の命を預かる海軍士官は刻々と変化する情勢の中で健全な判断を瞬時に行わなければならず、部下の全員がその指揮官に命を預けて自分の配置で全力を発揮できるのは表裏のない潔い指揮官のみです。
外連(けれん:かっこ良く見せること)や嘘、ごまかし、口だけの言行不一致は海軍士官の資質なしと厳しく叱責、制裁されました。

「1 気力に欠くるなかりしか」
今日1日の行動を振り返り、気力に欠けていることはなかったか。
気迫に欠けるところはなかったか

「1 努力に憾(うら)み勿(な)かりしか」
憾み(うらみ)とは他と比較して不満に思うことをいう。
今日1日の自分の努力に反省はないか?
自分の限度まで努力したか?
易きに流されたことはなかったか?

「1 不精に亙(わた)るなかりしか」
服装、姿勢、身だしなみ、整理整頓等、頭のてっぺんから、つま先、身の回りまで、不精になってはいなかったか?。

【米海軍にも影響】

昭和45年ごろ江田島の幹部候補生学校を訪問された米海軍第7艦隊司令官、ウィリアム・マック中将(のち海軍兵学校長)は五省に感銘を受けて英訳を募集しています。
そして日本人、松井康矩氏(76歳)の英訳が当選し、賞金1000ドルとともに英訳文が、メリーランド州のアナポリス海軍兵学校(United States Naval Academy)に掲示されたそうです。

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至誠:Hast thou not gone against sincerity?
言行:Hast thou not felt ashamed of thy words and deeds?
気力:Hast thou not lacked vigor?
努力:Hast thou exerted all possible efforts?
不精:Hast thou not become slothful?
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昭和60年頃には、ある米海軍士官が江田島の海上自衛隊幹部候補生学校を見学し、五省について、米海軍の機関紙「プロシーディングス」に次のように寄稿しています。

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幹部候補生の訓練の激しさと規律の厳格さに強い印象を受けた。
この規律の根源は、五省を中心とする過去の豊かな遺産である。
腰の短剣は姿を消し、制服も完全に西欧風であるが、日常生活は海軍兵学校生徒が鍛錬を積んだ40年前ときわめてよく似ている。
わずか2ヶ月前にはカナヅチだった候補生が夏の終わりには8マイル(約15Km)の遠泳ができるようになる。
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現在の海上自衛隊も旧海軍の良き伝統を引き継ぎ、高い精強性を維持しています。

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