海上自衛隊ホームページ カレーレシピより
上の写真は海上自衛隊ホームページのカレーレシピの写真です。
護衛艦のカレー昼食に最も近い写真であるので引用させていただきました。
海上自衛隊では護衛艦であろうが、P3C対潜哨戒機部隊である航空部隊でも、 或いはその他の陸上部隊でも金曜日の昼食はカレーライスです。 そして写真のように牛乳とゆで卵、サラダがセットになったものが定番です。
カレーライスには各護衛艦、各部隊特有の隠し味があります。
隠し味には赤ワイン、ミロ、茹で小豆、インスタントコーヒー、コカコーラ、チョコレート、 ブルーベリージャム等さまざまなものが使われ、それぞれカレーの味が違います。
どの護衛艦のカレーが美味しいかという評判は調理員はもとよりその護衛艦乗組員の自慢であり 名誉でもあるほど護衛艦のカレーには海上自衛官は思い入れがあります。
護衛艦は旧海軍の「月月火水木金金」という歌のとおり、長期行動が普通で曜日の感覚がなくなります。
金曜日の昼前に調理室からカレーの匂いがしてきたり、昼食に食堂に降りて行ったときにカレーの匂いがして、 おー今日は金曜日かと思うのは艦艇乗組員ならだれでも経験しています。
最近、護衛艦のカレーもテレビのバラエティー番組では良く取り上げられ、 長期航海中は曜日感覚がなくなるから金曜日にカレーがでると、さも本当かのような話も良くされていますが、 それは誤りです。
私が護衛艦乗り組みを始めたころは、土曜日の昼食が定番でした。 いわゆる「半ドン」といわれた土曜日は昼から休みのため、護衛艦では土曜日の午前中は大掃除が日課でした。 当然調理員も大掃除に駆り出され、また調理室や冷凍庫、調理器材の大掃除も行わなければなりません。 そして生野菜等の1週間ごとの調達も控え、食材の整理もしなければなりません。
このような状況下では、東郷平八郎元帥が舞鶴鎮守府長官時に海軍に導入されたカレーが最も 効率的なメニューとなったのが本当の理由です。
ただし、冒頭の写真にも示しましたが、カレーにはサラダとゆで卵と牛乳が必ず添えられています。
私が護衛艦隊の作戦主任幕僚の時の艦隊集合訓練で当時の司令官が全艦隊に厳しい訓練や作業の合間に 次のような粋な課題(指定作業)を出されました。全護衛艦は速やかに回答しなければなりません。
課題(指定作業):「海上自衛隊では何故金曜日にカレーライスをだすのか? カレーライスには何故、ゆで卵と牛乳が添えられているのか? 速やかに回答せよ」
集結中の30数隻の艦艇では皆が士官室に集まり、あれこれ意見をだし回答します。
全艦からの回答の詳細は覚えていませんが、 前述した土曜カレーの理由と長期航海中の曜日感覚を戻すという理由が半々であったことを覚えています。
また、牛乳とゆで卵についても賞味期限のある生糧品の1週間ごとの処分が最も多かったのを記憶しています。
次のような興味深い回答も記憶に残っています。
昔の海軍は脚気(かっけ)や伝染病等で死ぬ兵士が多かった。 数百人も数千人も乗艦している艦内で1人1人の健康診断をすることは困難であり毎週土曜日にカレーと牛乳、 ゆで卵を食べさせた。
牛乳と卵は合わないため、体調の悪い人は嘔吐等を催し、健康診断代わりとなっていた。この事実関係は不明です。
いづれにしても海上自衛官は皆カレーライス大好きです。
私は今でも金曜日の昼食は会社の近くのカレーショップに行くことが多いです。 そこで海自時代のOB仲間と出会いお互いに苦笑いすることも多々あります。
最後に、護衛艦の士官室でのカレーバトルの一端を紹介します。
護衛艦の士官は当直の士官を除いて朝、昼、夕の3食を士官室で食べます。
しかも全士官が着席したのち艦長に準備よしを届け、艦長が着席し、 艦長が箸をとって初めて「いただきます」と食事が始まります。
給仕は任期制隊員が2、3人で月交代で行います。
しかし金曜日の昼食はカレーで様相が変わります。
大好きな匂いに舌鼓を打って着席して待ちます。
カレーライスですから事前に配膳されているのはサラダとゆで卵と牛乳です。
暖かいカレーライスは当然、艦長から順番に出されます。
通常士官は20数名から30名です。
一番若く食べ盛りの20代の士官はほぼ最後の順番です。
そして海軍では食事は5分で済ませよと幹部候補生学校でも指導されるだけあって皆食事は極めて早いです。
配食が中堅幹部の終わりごろになると艦長や上級幹部の「おかわり」が始まります。
従って若い士官にはなかなかカレーライス本体が届きません。
士官係りも心得たもので3回目のおかわりはないようにてんこもりのおかわりを出して時間を稼ぎ、 若い幹部に配食してくれます。
金曜日の護衛艦の士官室での楽しい昼食風景でした。